スイートホーム
「あ…」


指先からカタカタと震え出し、その揺れは全身へと広がって行く。


「こ、怖かった、です」


次いで涙もじんわりと滲んで来た。


赤の他人でももちろん嫌だけど、慣れ親しんだ相手に、それまでに見た事のない極限の精神状態で暴言を吐かれたり力でねじ伏せられたりするのは、それはそれでかなりのショックだった。


「大丈夫。ちゃんと素直に、心と体が怖がっているから」


穏やかにそう言いながら、小太刀さんはポケットを探り、ハンカチを差し出して来た。


「無理してその気持ちを押さえ込んだり、強がったりしては駄目なんだ。思う存分発散しておいた方が良い」


その優しさに、もう涙腺は限界だった。


ハンカチを受け取り、そこに顔を埋めて、私は小さい子のように声を上げて泣きまくった。


家族や友達の前だって、こんなに全力で泣きの感情を爆発させたことなんかない。


それが今の自分に与えられた使命とばかりに、私はただひたすら、号泣し続けたのだった。


「……ご迷惑、おかけしました…」


どれくらいそうしていたのだろうか。


かなり長く感じたけれど、時間にすればせいぜい7、8分の事だったかもしれない。


だけど日常生活の中でいつの間にか過ぎて行く7、8分と、泣く事だけに専念するそれとでは、やはり時間の流れは異なると思うし、傍らでその様子を見守らなくてはならない人はかなりの負担を強いられる筈。
< 176 / 290 >

この作品をシェア

pagetop