スイートホーム
「まぁ、そうだったの。だからコートをそんなにしっかり着込んでるのね」


「そ、そうなんです」


「ともかく何事もなくて良かったわ~。あ、小太刀さんごめんなさいね?お休みのところ用事を言い付けちゃったりして」


「いえ、大丈夫です」


「でも、これで安心して仕事に戻れるわー」


文子さんが晴れやかな笑顔でそう言った所で、管理人室から電話の音が響いて来た。


「あ、それじゃあね。二人とも、それぞれ休日を楽しんでちょうだい」


そう言い残し、室内に消えた文子さんを見送ったあと、私と小太刀さんの視線は自然とかち合った。


「今日は本当にありがとうございました」


「いや」


「ハンカチは乾き次第お返ししますね」


「ああ」


そう答えたあと、小太刀さんは「じゃ」とあっさりとした別れの言葉を述べて、ロックを解除し自動ドアを抜けた。


私もそれに便乗して歩を進め、階段を軽やかに駆け上って行く彼の後ろ姿をドキドキしながら眺めたあと、自室を目指す。


「ふー」


室内に入り、ため息を吐きながらコートを脱いだ。


クローゼットからハンガーを取り出そうとしてふと思う。


一旦クリーニングに出した方が良いかな?これ。


なんせ地面を転げ回ったんだもんね。


ざっと埃は落としたけど、目に見えない菌なんかが付着してるかもしれないし。


このまま部屋の中に置いておくのはちょっとね。
< 179 / 290 >

この作品をシェア

pagetop