スイートホーム
重ねた食器を流し台に運びながらお母さんはそう締め括った。


……傷心の娘にかける言葉がそれだもんね。


ま、期待はしてなかったけどさ。


「ちょっと彩希、何ぼ~っとしてるのよ。早くそれ食べ終わらせて、洗い物手伝ってよ」


「…うん」


「あなたはさっさとお風呂に入って来ちゃって。後がつかえるでしょ」


「はいはい」


お母さんにそう急かされて、私とお父さんはそれぞれやるべき事に取りかかった。


胸がつかえている感じがして、中々箸が進まなかったんだけどな…。


っていうか、志希は自分の食器も運ばずにさっさとリビングのソファーに移動してテレビを見始めているというのに、何のおとがめもなし。


『長女』っていうだけで、いつも私だけが厳しくされてお小言を言われて、一方志希は、自由気ままに行動する事を許されて来たんだよね。


言いたい事は山ほどあるのだけれど。


言っても無駄だし、不快感が倍になって返って来るだけだから、余計なアクションは起こさずにいよう。


私は残りのおかずとご飯を急いで口に入れ、吐き出したかった気持ちと一緒に無理やり飲み込むと、立ち上がり、自分と志希の食器を手早く重ねた。
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