スイートホーム
「えー。うそでしょ!?」


「ホントに辞めちゃうのっ?」


「はい…」


飲食提供時間を過ぎた後、社員食堂の厨房にて。


私の辞職を把握している人といない人がいるので、黙って去る訳にはいかないと、皆さんが揃っている時に報告する事にした。


「突然こんな事になってしまって、申し訳ないです」


「なんでなんで?」


「守家さんは私達と違って正社員なのにさぁ。辞めるなんてもったいないじゃなーい」


「そうよねぇ」


予想はついていたけれど、パートのおば様方に瞬時に周りを取り囲まれ、質問攻めにされた。


「あ!」


すると突然、その中でも古株の田中さんが声を上げる。


「もしかして、柳田さんといよいよゴールインとか?」


「あぁ~!」


「なるほどね!」


その言葉に、合点がいったように皆が一斉に頷いた。


「花嫁修業ってやつかぁ」


「まぁ~。おめでたいわね~」


その流れに、私はギョッとしつつ慌てて返答する。


「ち、違いますよ!結婚の予定なんかないです」


「ま~たまたぁ。隠さなくても良いじゃない!」


「いえ、ホントに、辞めるのはあくまでも一身上の都合で…」


「でもさぁ、守家さん料理の腕は完璧なんだし、今さら修業するような事なんかないんじゃない?」


「何言ってんのっ。結婚前には色々準備があるじゃない!」
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