スイートホーム
私の言葉は華麗にスルーし、おば様方はどんどん話を展開して行った。


「五葉商事の社員さんの結婚となると、立派なお式を挙げる事になるでしょうしねぇ」


「あらでも、やっぱりもったいないわよ~。私達が若い頃は女は結婚と同時に退社せざるを得ない雰囲気だったけど、今はそんな事ないもの」


「そうよねぇ~。特にこの会社は福利厚生がしっかりしてるんだから、挙式前後に有給を目一杯使ったり、産休や育休をしっかり取ったからって上から嫌味言われたりしないでしょ?」


「現場の私達だってもちろん協力するし」


「そんなの人それぞれじゃないの。守家さんはスッパリ辞める選択をしたんだから、周りがとやかく言う事じゃないわよ」


「あ、あのですね、ホントに、私は寿退社をする訳ではなくて…」


「大丈夫よ!ちゃ~んと心得てるから!」


「そうそう!周りに言いふらしたりしないから、安心してよ!」


再度主張してみたけれど、田中さん達に笑顔でそう話をまとめられてしまった。


その後は皆さん「じゃ、お先に失礼します~」「お疲れ様で~す」等と口々に挨拶しながら厨房を出て行ってしまった。


まいったな…。


結局勘違いを正せなかった。


やっぱり皆さんのあのパワーには太刀打ちできない。


……でも、私はあくまでも否定しておいたもんね。


あと数週間の辛抱だし。
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