スイートホーム
もしも願いが叶うなら、すぐさま過去へと飛んで、その事実を彼女達に教えてあげたい。
「当然、法の整備なんか成されていないし、その犯罪に対しての正しい知識を持ち合わせている人など少数だっただろう。それまで正しく真面目に生きて来た善良な人達が、相手にも自分と同じ道徳心や良心があると信じてしまったとして、一体誰が責められるだろうか」
一呼吸置いてから、加賀屋さんは言葉を続けた。
「美鈴さんは想像もしていなかっただろう。久しぶりに一人で辿る、夕日に照らされた大学からの帰り道。家までほんの数百メートルの距離にある、多くの人が行き交う見慣れた商店街のど真ん中で、まさか突然現れた男に、刃物で切りつけられてしまうだなんて」
そのショッキングな内容に、私は思わず息を呑み、両手で口元を覆った。
「男はどうやら無理心中を図ったらしい。美鈴さんが倒れたあと、今度は自分自身に刃を向けたけれど、その一瞬の隙を突いて周りに居た人達が取り押さえた。すぐに救急車と警察が呼ばれたけど…。美鈴さんはほぼ即死状態で、病院で死亡が確認された」
頬に触れた自分の指先が氷のように冷え切っているのが分かる。
「そこから先は、何だか俺自身夢の中の出来事のようで所々記憶が曖昧なんだけど…。気付いた時には道場の仲間達と一緒に、美鈴さんの通夜に参列していた」
「当然、法の整備なんか成されていないし、その犯罪に対しての正しい知識を持ち合わせている人など少数だっただろう。それまで正しく真面目に生きて来た善良な人達が、相手にも自分と同じ道徳心や良心があると信じてしまったとして、一体誰が責められるだろうか」
一呼吸置いてから、加賀屋さんは言葉を続けた。
「美鈴さんは想像もしていなかっただろう。久しぶりに一人で辿る、夕日に照らされた大学からの帰り道。家までほんの数百メートルの距離にある、多くの人が行き交う見慣れた商店街のど真ん中で、まさか突然現れた男に、刃物で切りつけられてしまうだなんて」
そのショッキングな内容に、私は思わず息を呑み、両手で口元を覆った。
「男はどうやら無理心中を図ったらしい。美鈴さんが倒れたあと、今度は自分自身に刃を向けたけれど、その一瞬の隙を突いて周りに居た人達が取り押さえた。すぐに救急車と警察が呼ばれたけど…。美鈴さんはほぼ即死状態で、病院で死亡が確認された」
頬に触れた自分の指先が氷のように冷え切っているのが分かる。
「そこから先は、何だか俺自身夢の中の出来事のようで所々記憶が曖昧なんだけど…。気付いた時には道場の仲間達と一緒に、美鈴さんの通夜に参列していた」