スイートホーム
しばしの沈黙のあと、加賀屋さんは静かに優しく問いかけて来た。


「大丈夫?」


「……え?」


最初意味が分からなかったけれど、すぐに、溢れ出した涙で頬を濡らしている私を気遣っての言葉だと気が付いた。


「すみません。ずっと、我慢していたんですけど…」


手にしていた割烹着に顔を埋め、震える声で謝罪する。


「そんな。謝る必要なんかないよ」


「だから、小太刀さんは、警備員になったんでしょうか…」


「え?」


顔を上げ、加賀屋さんの瞳を見つめながら言葉を繋いだ。


「危険にさらされている人達を守れるように」


一人でも多くの弱者を救えるように。


「うん…。だろうね」


「そして加賀屋さんも?」


「まぁ、ね」


頷きながらそう言ったあと、加賀屋さんは急いで付け加えた。


「いや。と言っても、別に俺は最初から美鈴さんの事件ありきで自分の進路を考えていた訳ではないし、小太刀と示しあわせていた訳でもないんだよ?」


「…そうなんですか?」


「うん。就職活動をする時期になって、どう考えても俺は普通のサラリーマンってのは性に合わないし、アクティブに動き回れて、なおかつやりがいを持ってできるような仕事は何か無いかと頭を悩ませていた所で…」


「コスモ警備保障の求人を知ったんですか?」
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