スイートホーム
「そうそう。その時に、『俺が求めていたのはこれだ!』って思ったんだよね。幼少期から続けて来た剣道の腕も活かせるし、きっと美鈴さんも天国から応援してくれるハズだって」


「そして見事に採用された訳ですね」


「うん。おかげで仲間内では内定一番乗り。しかもそこ一社しか受けてなかったからね。連戦連敗の奴らからのやっかみの視線が痛かったよ…」


苦笑しながらそうぼやいた後、加賀屋さんは口調を変えて話を続けた。


「そしたら4年後、俺の後を追うように小太刀もコスモ警備保障に入社して来てさ。『俺もここで頑張ります。加賀屋さんが選んだ場所なら間違いないから』なんて、可愛いことを言ってくれちゃって…」


「同じ体を張る仕事でも、警察官になるという選択肢はお二人ともなかったんですね」


「え?うん」


そんなつもりはなかったんだけど、話の腰をポキッと折るような言葉の挟み方をしてしまった。


「やっぱり、お姉さんへのあの時の対応のまずさが、ずっと心に引っ掛かっているんでしょうか?」


「う~ん…」


しばし考え込んでから、加賀屋さんは徐に語り出した。


「一つ、誤解の無いように言っておくけど、俺はもちろん小太刀も警察組織全体を恨んでいるって訳ではないよ」


「…そうなんですか?」
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