スイートホーム
「ああ。確かに過去の出来事は残念だったし、件の人物には正直、人の一生を左右するような職に就いて欲しくなかったと思ってしまう。一方で、その称号に相応しい、素晴らしい警察官も世の中には確実に存在しているから。実際に、さっき話に出た道場の先輩方は皆人格者だし、心から尊敬できる人達だと思っている」


「はい…」


「そもそも警備業務に携わる過程で、警察と連携して動かなくちゃいけない場面も多々あるし。悪意や対抗心を抱いていたりしたら、とてもじゃないけど仕事が成り立たなくなってしまう」


「ですよね…」


「さらに、新たな犯罪の抑止力としても、様々な法的権限を持つ公の機関っていうのは絶対に必要な存在だと思っている。だから俺達は、警察組織のこれからの益々の発展を心から願っているし、多くの優秀な人材が育ってくれる事を祈っている。……で、俺と小太刀は彼らとは異なる立場で、別の角度から困っている人達にアプローチできる道を選んだってだけの話だから。つまるところ、志は同じってワケ」


「…何だかすみません。私、不躾な質問をしてしまったみたいで…」


加賀屋さんと小太刀さんは過去のわだかまりなんかとっくに捨て去って、すでに次のステージに進んでいたというのに。


お二人の強靭な精神力には心底感服する。


ただ……。
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