スイートホーム
右手で掴んだままの、テーブル上の空になった紙コップを見つめながら力強く頷いた加賀屋さんは、ふいに顔を上げ、何やら意味ありげな視線を向けて来た。


「ところで、話は突然変わるんだけどさ」


「はい」


「もし間違えてたらゴメンね?…いや、十中八九、正解してる自信はあるけども」


「え?」


「守家さんてズバリ、小太刀の事が好きなんだよね?」


本当にそれまでとは全くジャンルの異なる話で、頭が切り替わるのに多少の時間を要した。


「もちろん、『ライク』じゃなくて『ラブ』の意味でね」


「……へ!?」


ようやく加賀屋さんの言わんとする事を理解した私は、盛大に慌てふためく。


「い、いや、何をそんなっ。えぇぇー!?」


「隠さなくても良いって。俺も、小太刀とは違う意味で千里眼の持ち主なんだからさ」


得意気に、満面の笑みを浮かべながら加賀屋さんは話を進めた。


「俺としては、守家さんみたいな人になら安心して小太刀を任せられると思ってる」


「い、いや、そう言っていただけるのは大変ありがたいんですけど、肝心要の小太刀さん本人の気持ちが何より重要な訳で…」


「……ふぅ~」


何故か加賀屋さんは肩をすくめ、やれやれ、という感じでため息を漏らした。


「奥ゆかしくて慎重な所も守家さんの魅力の一つではあるけど、自己評価が低すぎるってのも考えものだなぁ」


「え?え?」
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