スイートホーム
「うん。だって、この年になったらもう頼みたくても頼めないメニューじゃないスか。だから、守家さんにその夢を叶えてもらいたいなって思って」


「えっと…。チキンライスにエビフライにハンバーグ、とか?」


「そうそう。それを可愛く盛り付けて、ライスには国旗なんか立てちゃったりして」


別にできない事はないけどね。


サラダやスープで野菜を補えば、栄養面でも問題はないし。


要するに、普段作っている定食を洋風バージョンにして、レイアウトを変えれば済む話だもんね。


「分かりました。一応それも候補に入れておくね」


「やったー!」


私の回答に相川さんは両手を上げて飛び上がった。


全身で喜びを表現するその姿に、思わず心の中で『若いな…』と呟いてしまう。


4つ違いの志希でさえ、会話してるとジェネレーションギャップを感じてしまう事があるけど、それよりさらに年下となると、何だかもう違う次元の生き物に見えて来てしまう。


いや、むしろ高校生くらいまで遡ってしまえば『壁があって当たり前』と開き直る事ができるんだけど、相手が中途半端に大人だと、その若さが妙に眩しく感じられちゃうんだよね。


「うるせーなー。ちょっと落ち着けや」


何て事を考えていたら、加賀屋さんがピシャリと叱りつけた。


その心底うんざりとしたような表情と声音に、私は思わず盛大に吹き出してしまったのだった。
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