スイートホーム
「あれ?」


自室に戻り、いつものようにケータイをチェックしてみると、19時ちょっと過ぎに着信が一件あった事に気が付いた。


ちょうど厨房で忙しく動き回っていた頃だ。


相手は五葉商事で大変お世話になった、管理栄養士の先輩である畑山さん。


業務連絡や相談などできるよう、入社してすぐに社食で働く皆さんと番号交換をしたのだった。


会社を辞めた今も、わざわざ削除する必要もないと思い、そのまま電話帳に残してある。


会わなくなってまだ3ヶ月くらいだけど、何だかとても懐かしく感じる。


「でも…。一体何の用だったんだろ?」


当然のことながら沸き起こる、素朴な疑問。


「どうしようかな」


現在の時刻は22時。


人様に電話をかける時間としてはちょっと遅めだけど、ただ、畑山さんは確か一人暮らしだと言っていた。


寝る前にちょっとお話させていただくくらいなら、さほど失礼ではないかな。


どうしても都合が悪ければ、そもそも電話には出ないだろうし。


このタイミングを逃したら、私の方が今度いつ電話できるか分からないもんね。


しばし迷ったあと、意を決し、通話ボタンを押した。


『はーい』


「夜分遅く申し訳ないです。私、守家なんですが…」


ディスプレイに名前は出ているハズだけど、とりあえずは名乗らないとね。


『うん。守家さん久しぶり~』
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