スイートホーム
「ううん。それは別に良いよ」


「そうだよ。皆に周知するなら、このタイミングしかなかったんだし」


畑山さんも、笑顔でそう返答しながら厨房の奥にある事務室前へと歩を進めた。


「じゃ、守家さんここよろしくね。終わったら私の方手伝って」


「あ、はい。分かりました」


畑山さんがドアを開け、室内に消えたのを視界に捉えながら、私も自分に与えられた任務をこなすべく動き始める。


パートさんが帰る前に食器洗浄機のスイッチは押しておいてくれたので、それが作動している間に作業台を消毒する事にした。


……本当に、ありがたいな。


用具の準備をしながら、先ほどの先輩の大人な対応を思い返す。


おば様方だって、知りたがりではあるけれど、だからといってそれをネタに意地悪をしかけて来る訳ではないし。


典型的な、世話焼き、お節介精神の持ち主なだけというか…。


大学の同級生達の話を聞くと、職場内で資格持ちは一人だけ、というのはザラで、毎日てんやわんやだったり、それを労ったりフォローしてくれるどころか「私達とは立場が違うんだから当たり前よね~」などとチクチク嫌味を言って来るパートの古株さんがいたりして、色々と苦労しているようだ。


女性が多い職場というのはやはり難しい。


でも、就きたくて就いた仕事だし、「そんなんでへこたれてたまるか!」って感じで皆頑張っているようだけど。
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