スイートホーム
安堵したのは事実だけど、展開が急過ぎて梨華に対してまだそこまでの感情は沸き上がって来ていなかったので、どう返事して良いものやら迷っている間に彼女は続けた。


「良いわよね、彩希は」


こんな場面でも『ああ、やっぱりこの子可愛いわ』と思わず感心してしまうような、無邪気でありながら妖艶な微笑みを浮かべつつ。


「要領が悪くて押しが弱くて不器用なようでいて、最終的には自分が望む物、しかもそのカテゴリーの中ではかなり上質な物を、いつの間にか手に入れているのよね。友情も仕事も、そして愛情も」


しばらく離れていて免疫が薄れていたからなのか、不覚にも梨華の笑顔に見とれてしまっていた私は、彼女の話をきちんと理解していなかった。


「…っえ?」


変な間を開けて、我ながら緊迫感ゼロの声を発した直後、志希がそれをフォローするように口を開く。


「だから『悔しくて妬ましくてついつい意地悪しちゃったの』ってか?」


外面が良く、特に美人に対してはそれが三割増しになる志希にしては珍しく冷たい、突き放すような物言いだった。


「それってひどくね?八つ当たり以外の何物でもねーじゃん」


その予想外の言動に、私は思わず我が弟の顔を凝視してしまう。


「うちの親父も前に言ってたけど、姉ちゃんは日々コツコツ真面目に努力しているからこそ、最後の最後に勝ち組になれるんだよ」


「え?そんな、別に私は…」
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