スイートホーム
「そうだよ小太刀。別に仕事を甘く見てるって訳じゃないからな?ただ、ガチガチに身構えてたら視野は狭くなるし良い動きができなくなるから、守家さんにこういう説明をしつつ、自分自身をリラックスさせてるってだけで」


「いついかなる時も平常心の小太刀さんにはそんなプロセスは必要ないんでしょうけど、俺らが自己暗示をかけてメンタルを強化するくらいは許して下さいよー」


「で、それに伴って、シフトがあちこち変更になってさ…」


小太刀さんへの解説はすぐに切り上げ、再び私に視線を戻してから加賀屋さんは続けた。


「また『これ』を訂正してもらわないといけなくなったんだ」


言いながら、ずっと手元に置いていた数枚の紙を私に向けて差し出す。


話の流れですぐに予想はついたけど、案の定、その書類は当月分の社食の予約表だった。


両手で受け取り捲ってみると、小太刀さんと相川さんの分もちゃんとある。


「短期間のうちに何度も申し訳ないけど、この通りに直しておいてもらえるかな?」


「あ、はい。了解しました」


数日ぶりに小太刀さんの低音で張りのある、凛としたその声を間近で耳にして、またもや心が浮わついてしまっていた私は、慌てて自分自身を律した。


上の空で対応するなんて失礼にも程がある。


今は就業時間内なんだから、気持ちを仕事モードに切り替えなければ。


でも、これで先ほど抱いた疑問は無事に解けた。
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