スイートホーム
「だってさ、姉ちゃんくらいの年代の女子なら、もっと洒落た服とかブランド物とか持ってたりするものなんじゃねーの?あと、エステ行ったり海外旅行したり」


「……そんなお金ないもん」


「は?いやいや、あるだろー?俺より4年も長く働いてんだし、天下の五葉商事の社員なんだから」


「正確には、そういった方面に使うようなお金は無いってこと」


私はお味噌汁の火を止め、お椀によそると、志希の席の前に置きながら続けた。


「興味が無いものに無理矢理お金を費やす必要はないでしょ?だったら、その分貯金しておいて、将来に備えるよ」


「何だよ~。つまんねー人生だなぁ。歳取ってから金だけあっても意味なくね?やっぱ若いうちに色々と冒険しとかねーと」


志希はそう言いながら手にしていたケータイをテーブルに置くと、箸を取り、配膳されたばかりのお味噌汁を一口啜った。


志希は小さい時分に教えられたマナー通り、献立の中に汁物がある場合は、必ずそれから口を付けていた。


というか、マナーどうこう以前に、まずは口内を潤してからじゃないと箸が進まない体質になってしまったらしい。


結果的に体裁は整ってるからその習慣自体は別に良いんだけど、自分は動かずに人に配膳をやらせておいて「ああ、やっとお待ちかねの味噌汁が出て来た」的な態度で食事を始めるから、内心ちょっとイラついている。
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