スイートホーム
「せめてさ、その髪型くらい、もーちょっと色気のあるものにしたら?」


そんな私の心中を知る由もなく、志希は呑気に言葉を繋いでいた。


「『ゆるふわパーマ』がかかってるボブにするとか、もしくはもっと伸ばして毛先を巻くとか」


「良いの。必要な時にさっとまとめられるし、この長さ、形が私にとっては一番ベストなんだから。これ以上短くしちゃったら束ねられなくなっちゃうし、反対に長いと手入れが大変だし」


「その手入れをプロに任せれば良いんじゃん。普通の女子は『伸びたら切る』じゃなくて、メンテナンス目的で月イチか、それ以上の頻度で美容室に行ってるらしいぜ?」


「…それは女子の中でもよっぽどのおしゃれさんでしょ?」


何で20代男子の志希がそんな事に詳しいんだ?と思いつつ反論した。


「私は別に良いんだってば。枝毛や切れ毛がある訳じゃなし。どうせ一日の大半をゴムでまとめて過ごすんだから、髪型に気合い入れたって意味ないじゃない」


偉そうな口調でしつこく食い下がる志希とそれ以上やり合うのが面倒だったので、私は強引にそう話を締めくくると志希に背を向けた。


「……姉ちゃんは俺に似て顔の造りは悪くないんだから、磨けば絶対光るのに」


空になった鍋を洗うべく、流しの前に立った私に向けて、志希はめげずに言葉をかける。
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