スイートホーム
眉尻を下げてそう言うお母さんに、志希は苦笑いしながら続けた。


「いやいや、つーか、その話を聞いちまったのにスルーできる訳ねーじゃん。その代わり、姉ちゃんの方をもうちょっと減額してやれよ」


「あらっ。ホント志希って、お姉ちゃん思いなのよねぇ」


それに比べて…と呟きながら、お母さんは私をジロッと睨んだ。


……何でそんな目で見られなくちゃいけないの?


私の方こそ、怒ってる立場なんだけど?


『お姉ちゃん思い』って、今まで免除されていた事をようやく始めるだけじゃない。


しかもそれだって、私とは条件的に大分差をつけられているっていうのに。


「んじゃ、この話はひとまずこれで終わりな。姉ちゃん、早く風呂入って来いよ」


色々思う所はあったけれど、志希がそう締めくくったので、私も胸の内を明かす事はせず、無言でこちらを睨み続けるお母さんの視線を全力で無視して台所を後にした。


その時に改めて痛感したのだ。


やっぱり、お母さんが可愛いのは志希だけなんだ。


早くこの家を出なければ。


ここに居たら、愛を与えてくれる訳でもないのに、それに見合わない義務や責任を押し付けられるだけだと。


それでも、その時点では優さんと近いうちに結婚するつもりだったし、そのタイミングで家を出れば良いと、同居を続けてしまった。
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