スイートホーム
「ただ、ボディーガードの依頼はそんなに頻繁に入る訳じゃないから、普段は別の業務のヘルプ要員として働いてるんだけどね」


奥さんが、お煎餅を手に取り、ガサガサと音を立てて袋を開きながら言葉を挟んだ。


「民間のボディーガードを雇うにはそれなりのお金が必要ですもんね。私らみたいな一般人が、そんな気軽には頼めないわよね」


「そうですよね…」


いわゆる「セレブ」で暴漢の標的になりやすい立場の方が主な顧客ということか。


もしくは一般の方が、警察がまだ介入できないような段階で、でも当事者としてはかなり切羽詰まった状況で、何とかお金を工面して、藁にもすがる思いで依頼して来る場合もあるだろう。


そういった方達を自分の身を挺して守り抜かなければならないのだから、強靭な肉体と精神の持ち主じゃないと勤まらないお仕事だと思う。


そして私はその精鋭部隊の栄養面をサポートする為に雇われた。


もともと自分の仕事を甘く見た事など一度も無いけど、改めて、身が引き締まる思いがした。


「すみません」


するとその時、背後に位置するカウンターから、低音だけど良く通る男性の声が響いて来た。


「宅配便を預かってもらってるみたいで…」


「ああ~、ハイハイ」


その声にいち早く反応した奥さんは、手にしていたお煎餅を台の上に置き、急いで立ち上がった。
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