スイートホーム
「この箱なんだけどね。すごく重いみたいだから気を付けて」


「ああ、大丈夫です」


彼はそう答えながらミカン箱くらいのサイズのその荷物を軽々と持ち上げた。


就業時と比較すればスリムに見えるとはいえ、やはりTシャツから伸びた二の腕に負荷がかかった瞬間、盛り上がった筋肉はなかなかのものだった。


思わず心の中で『ほぉー』と感嘆の声を上げてしまう。


別に私は筋肉フェチでも何でもなかったハズなんだけど。


どちらかと言うと、体格が良い人よりは華奢な人の方がタイプだった。


ズバリ、優さんがそうだったから。


といっても一応私より5センチは背が高いし、それに比例して体重もあったから、並んだ時にそんなにバランスは悪くなかったハズ。


だけど悲しいかな。


160センチ弱の梨華と並ぶと、さらにお似合い感が増していたんだよね…。


「あ、ちょっと待って。小太刀さん」


箱を手に、さっさと出入口に向かう彼を、奥さんは慌てて呼び止めた。


「せっかくだから紹介しておくわね。あちら、9月からここで働いてくれる、管理栄養士さん」


「あ、こ、こんにちは」


私はそう言いながら急いで体の向きを変えて正座し直し、言葉を続けた。


「守家彩希と申します。よろしくお願いいたします」


そしてペコリとお辞儀。
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