スイートホーム
上段から挨拶なんて失礼かとも思ったんだけど、靴を履いて二人の元まで移動して…とやっていると変な間が空きそうだったので、その場で済ませた。


「ああ…どうも。小太刀です」


彼も私に向き合い、頭を下げる。


改めて視線を合わせてみて、プライベートでもやはりその眼光の鋭さは変わらないのだな、とこっそり思った。


前回見た時は帽子をかぶっていたので分からなかったけど、短髪黒髪で前髪をツンツンと立たせたスタイル(正式名称は知らない)で、その髪の多さと色黒だけど張りのある肌質から、おそらく20代後半から30代前半くらいだろうと推測した。


ただ、その年代の人がまだまだ醸し出している「今時の若者っぽさ」はあまり感じ取れなかった。


何ていうか、古きよき時代の青春スターばりの渋さというか…。


とにかく「ザ!日本男児!」という枕詞がしっくりくる、古風な男性だった。


すると小太刀さんは「それじゃ」と言いつつ、ドアノブを器用に操り、今度こそとっとと部屋を出て行ってしまった。


「あ、あれ?」


思わず小さく呟く。


これで終わり??


初対面の時のエピソードと私の顔を覚えてくれていると期待していた訳じゃないけれども、それとは別にして、これから一つ屋根の下で暮らして行くのだから、もーちょっと何かしらやり取りが続くものだと思っていた。


「何か…。ごめんなさいね?」
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