スイートホーム
奥さんが困ったような笑みを浮かべながら畳の間に戻って来た。


「悪い人ではないんだけど、いかんせん愛想がなくて…」


「え?いえ、そんな」


奥さんが謝る必要など、これっぽっちもありはしない。


「実は、過去にちょっといざこざがあったもんだから…」


「え?」


奥さんは元の席に腰を落としつつ解説した。


「もともと硬派な人だけど、それでもこの業務に就いた当初は今よりは女性に対してソフトな対応をしていたのよ。でも、それで舞い上がっちゃうクライアントが出て来て」


「おい、そういう事を、ペラペラとしゃべるんじゃないよ」


「あら、何言ってんのよ!守家さんの耳には入れておいた方が良いじゃない」


旦那さんがやんわり止めようとしたけれど、奥さんは強い口調でそれを払い除けた。


「個人が特定できる情報を織り込んでる訳でもあるまいし。誤解されがちな人だけど、これこれこういう理由があるのよって、事前に説明しておいた方が守家さんも対処に困らないでしょ?」


何か言い返したいけれどかといって反論が思いつかない、という様子の旦那さんをほったらかしにして、奥さんは続けた。


「もちろん、ソフトな対応って言っても、仕事上常識的なものだったのよ?でも、すっかり小太刀さんの虜になってしまって、警護期間が終了したあとも職場や寮に押し掛けて来て関わりを持とうとしたりして」
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