スイートホーム
「そ、そうなんですか…」


「正しくはクライアントは大企業の会長さんで、小太刀さんを見初めたのは同居していたお孫さんなんだけどね。古くからのお得意様だし、明らかに体格差のあるか弱い女性に言い寄られたからといって危険性がある訳でもないから。あまり無下にはできなくて、結構大変だったみたいよ」


「どうやって解決したんですか?」


「会長が見るに見かねて間に入ったのよ。最初からそうしてくれれば良かったんだけど、恋愛は自由だし、もしかしたら小太刀さんもその気になる可能性はあったからね。孫可愛さに、ついつい放置しちゃってたみたい」


そこで奥さんは今更ながらに思い出したように目の前のお煎餅を手に取ると、袋越しに中身をパキパキと割り出した。


「でも、だんだん孫の行動がストーカーじみてきて、身辺警護を依頼した側の身内がそんな事してたら洒落にならないじゃないかって、慌てて自分の会社の顧問弁護士立ち会いのもと、話し合いをしたのよ」


「それで無事解決したんですね?」


「そうそう」


「その会長さんが良識的な方で良かったですよね」


下手したら自分の立場を利用してお孫さんの思いを遂げさせてしまったり、反対に逆恨みして小太刀さんを社会的に抹殺していた可能性もあっただろう。


「ほんとよね~」


ウンウンと頷きつつ、奥さんは細かくなったお煎餅の欠片の一つを指で摘まみ、口に放り込んでから続けた。
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