憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 木崎センパイのお母さんに挨拶をして、木崎センパイと一緒にマンションを出ると、

 「ホレ。」

 木崎センパイがジャケットのポケットからカイロを2コ取りだし、1つくれた。

 「あ、ありがとうございます」

 素直に受け取ると、木崎センパイが『いーえ』と言いながらカイロのビニールを剥くと、カイロと一緒にポケットに手を突っ込んだ。

 流石木崎センパイ。 しっかり2コ持って来ていた為、今回は手を繋ぐ事はない。

 カップルでも何でもないウチラが、手を繋がないのは当たり前だし、そもそも『手を繋ぎたい』などと思っているのも、ワタシの方だけなわけですが、今日はクリスマスだし、そんな奇跡が、夢みたいな事が起こったって良いではないか。

 期待を胸に、カトリックじゃないくせに、図々しくも心の中で、ラブ的ハプニングを祈って願って念じる。
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