チョコレートコスモス・アイズ
そのとき、携帯の着信音が鳴った。この音楽―ショパンの「雨だれ」は、絵美からのメール着信に設定している曲だ。チェックすると、やはり絵美からのメールだった。
「国武くん、チョコは受け取ってくれないの?」
いつもの絵文字たっぷりのメールではなく、しょんぼりした絵美の様子が伝わるメールだった。
涼はしばらく考えていたが、絵美に電話をかけることにした。
しばらく呼び出し音が鳴った後、絵美が出た。思いがけない涼からの電話で、声が少し弾んでいる。
「国武くん、電話ありがとう」
「高柳……俺、やっぱり吉川先生が好きだよ。結婚してもずっと好きだ。それに、悪いけど、俺は……女なんだ」
電話口の向こうで、沈黙が流れた。しばらくして、絵美が小声でゆっくり言った。
「知っていたわ。でも、本当は女子でも、私は国武くんが好きなの。諦めないわ」
涼の口元が自然にほころんだ。そうだ、絵美の情報網を忘れていた。しかし、諦めないとは、いつも陽気な絵美らしい言葉だった。
「嫁ぎ遅れるぞ」
「国武くんのお父さん、お母さんは心のお義父さま、お義母さまだから大丈夫よ」
涼と絵美は、電話越しに同時に笑った。涼は、笑いながらキッカを思った。
キッカ。俺はキッカを諦めない。俺が男になって、いつか迎えに行くまで、待っていてくれ。
チョコレートコスモスの瞳を咲かせたままで。
2014.2.8.
Happy Valentine's Day!
「国武くん、チョコは受け取ってくれないの?」
いつもの絵文字たっぷりのメールではなく、しょんぼりした絵美の様子が伝わるメールだった。
涼はしばらく考えていたが、絵美に電話をかけることにした。
しばらく呼び出し音が鳴った後、絵美が出た。思いがけない涼からの電話で、声が少し弾んでいる。
「国武くん、電話ありがとう」
「高柳……俺、やっぱり吉川先生が好きだよ。結婚してもずっと好きだ。それに、悪いけど、俺は……女なんだ」
電話口の向こうで、沈黙が流れた。しばらくして、絵美が小声でゆっくり言った。
「知っていたわ。でも、本当は女子でも、私は国武くんが好きなの。諦めないわ」
涼の口元が自然にほころんだ。そうだ、絵美の情報網を忘れていた。しかし、諦めないとは、いつも陽気な絵美らしい言葉だった。
「嫁ぎ遅れるぞ」
「国武くんのお父さん、お母さんは心のお義父さま、お義母さまだから大丈夫よ」
涼と絵美は、電話越しに同時に笑った。涼は、笑いながらキッカを思った。
キッカ。俺はキッカを諦めない。俺が男になって、いつか迎えに行くまで、待っていてくれ。
チョコレートコスモスの瞳を咲かせたままで。
2014.2.8.
Happy Valentine's Day!


