籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


「パフィ!」


ティアナの叫びに、マルセル達もはっとそちらに目を向けた。


人の目を掻い潜って部屋から抜け出してきたのだろう。

まだ体調の整わない体を懸命に引きずりながら、ゆっくりとこちらへ歩いてきている。


ティアナたちは急いでパフィのところへ駆け寄り、ディオンが今にも崩れ落ちそうなパフィの肩を抱き、支えた。


「パフィ、どうしてこんな」


「こちらから声がしたから……お兄様たち、の」


パフィは弱々しい声でそう言って微笑むと、視線をマルセルに向けた。


「お兄様。マルセルお兄様でしょう?」


パフィに名を呼ばれ、戸惑っているマルセルの背中をティアナは押しだす。


「うわ」


背中を押されてバランスを崩したマルセルが二、三歩前に進み、顔を上げたところでマルセルとパフィの視線が重なった。


「マルセルお兄様」


マルセルと目が合うと、パフィはぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべ、その可愛らしさに全員が目を奪われた。


「……パフィ」


パフィの笑顔にマルセルが観念したように肩の力を抜き、微笑む。


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