籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「よく僕がわかったね」
マルセルの言葉に、パフィは嬉しそうに答える。
「香りでわかります。いつもわたしを抱きあげてくださっていたお兄様と同じ香りですもの」
ティアナは黙って二人を見つめた。
微笑みあう二人は本当にそっくりだった。
まるで何年も会っていなかったことが嘘のように、仲良く話をしている。
面白くなさそうな顔をしていたディオンも、パフィの喜ぶ様子にいつのまにか柔らかい表情を浮かべていた。
「お兄様が姿を消してから、お母様とわたしはずっと二人で暮らしていました。でも、お母様も三年前にお亡くなりになって、わたしはディオンお兄様たちのもとへ迎えられました」
そう言ってディオンを見上げたあと、再びマルセルへ視線を戻す。
「お兄様、わたしは知っていますわ。本当のことを……なぜ、わたしたちを置いて出て行ったのかを……理解しています」
パフィを見つめたまま黙って瞳を揺らすマルセルの手を、パフィが手に取る。
「だからどうか気になさらないで、お兄様の好きに生きて。わたし達はどこへいても、離れていても、兄妹ですわ」