ポケットにキミの手を
「でもこれはダメなの。大事なものなの」
「お姉ちゃんのけーち」
楓ちゃんが素直に拗ねて、なんとなく菫が悪いような空気が生まれる。
彼女は居心地が悪そうに唇を噛んで黙り込んだ。
菫がどうしてあんなに自虐的なのか、どうしてこんなに自信が持てないのか、理解できたような気がする。
三姉妹の真ん中で、意志の強い二人に挟まれて彼女は自分を自然に殺してしまっていたんだ。
「そのネックレスは、僕が彼女にあげたものなんですよ」
サラリというと、女性陣は一気に俺を見る。
「彼女にとても似合うと思ったんです。楓ちゃんにはもっと大ぶりなデザインのほうが似合うと思うよ。いつか良いの見つけたらプレゼントするよ」
「え? 本当? やったー!」
「やだ、司さんいいのよ。ごめんなさいね、末っ子だからワガママで」
彼女の母親が、流石にフォローに入る。
俺は適当に笑顔で返しながら、早くここから菫を連れ出したいと思っていた。
「今度は泊まりにいらっしゃいね」
にこやかにそういうお母さんに挨拶をして、車に乗り込もうとした時、菫は楓ちゃんの傍に近づいて鞄からキーホルダーをだした。
「楓、さっきはごめんね。代わりにはならないけどこれあげる」
「なにこれ。キーホルダー? 可愛いね!」
「気に入ってくれた?」
「うん。ありがと! 菫姉」
俺は不思議な気分で、彼女を見つめた。あんなに苦しそうにしてなお、どうして菫はそうやって彼女に与えることができるんだろう。