ポケットにキミの手を
車に乗り込み、皆に見送られながら出発する。姿が見えないところまで来ると、菫は名残惜しいというよりはホッとしたような表情をした。
「菫の家って女系家族なんだな」
「はい。うるさかったでしょう。お姉ちゃんも楓もはっきりしたタイプなので。司さんが居てくれて助かりました。私の大事なものも、いつも楓が持っていっちゃうの」
それを受け入れて生きてきたのか。自分の気持ちを、当然のように後回しにされながら。
「キーホルダーだって気に入っていたんじゃないの?」
「うん。……でも、あれは私が作ったものなのでいいんです。司さんから貰ったものはあげられないけど」
「大事なら渡さなくてもいいのに」
「でも、楓はすぐ拗ねちゃうから」
それが当たり前なんだというように呟く彼女に、俺は胸が苦しくなる。
大事なものを人に渡さないのはワガママなんかじゃない。それを彼女に伝えたかった。
「お義母さんやあやめさんや楓ちゃんには失礼だけど、菫が虐げられてるシンデレラみたいに見えたよ」
あまり深刻になられないように、冗談を言うような口調で言うと、菫は驚いたように俺をまじまじと見返した。
「私も、……昔そんな風に思ったことがありました。でも、私はシンデレラみたいに心が綺麗じゃなくって。お姉ちゃんも楓も嫌いだって思ったり妬んだりすることが一杯あるから。……だから魔法使いが来てくれなくて、王子様にも会えないんだなぁって思ってました」
運転の合間に聞こえる菫の声は、とても寂しそうで。
片手間で話すには内容が重たいので、俺は近くの道の駅の駐車場に車を停めた。