ポケットにキミの手を
「同じ会社の方だったかな?」
「はい。人事総務部に所属しています」
「結婚したら仕事は?」
「え……っと、今のところ続けようと思っています」
「そうか。今の人は共働きが多いのかな」
急に具体的なことを聞かれて驚く。一瞬、どっちが望まれている答えなのかを考えてしまった。とりあえず、今の自分の気持ちを伝えたけれどサラリと流されたような感じだ。司さんのご両親は家庭に入って欲しいのかしら。
「……菫さんと司はどれくらいお付き合いしているの?」
今度はお母様が前菜を飲み込んだところで聞いた。私が答える前に、司さんが先に口を開く。
「そんなの関係なくない?」
「司には聞いてないわ。私は菫さんから聞きたいの」
「え、えと」
私は一瞬司さんをみてから、お母様に向き直る。
「そろそろ、八……九ヶ月になります」
「あら、一年経ってないのね?」
「はい」
そのまま、お母様の視線は司さんの方に動いた。
「大丈夫なの? 司。あなた前にも勇み足で失敗したでしょう」
「母さん!」
司さんの語気は荒く、私もお父様も一瞬動きを止めた。沈黙の波紋が広がって、どのタイミングで話しかけたらいいのか迷う。
「司、やめなさい。変なところは短気なんだから」
沈黙を切り裂いたのはお父様だ。どこまでも冷静な態度を崩さす、声だけで司さんを諌める。