春に想われ 秋を愛した夏


「なんで?」
「心配だから」

やめてよ……。
何で今更、そんな優しいこと。
あの時振られた私の気持ちは、まだ……。

未練の残る気持ちとは裏腹に、私は強気な態度を見せる。
期待した後のショックを想像すれば、当然の答えが導き出されているからだ。

「行かない」

目もあわせずに断ると、秋斗が息を漏らした。

「やっぱ。俺って嫌われてんだ?」

訊ねる声が何故だか挑戦的で、そんな風にされる謂れなんかない。と心の中がジリジリしてくる。
まるで、昼間の攻撃的な太陽が私の心の中を焦がしていくようだ。

だいたい、嫌う。というよりも、避ける理由があるのだ。

いくらふられてから何年も経っているからといって、そんな男にご飯を誘われてほいほいついていくほどバカじゃない。
そもそも、ふられた直後に突然連絡を取れないようにした相手が、どんな気持ちでいるのか考えないのだろうか。
それとも、秋斗にとってあの出来事は、取るに足らない些細なことで。
今はもう、そんな事などおぼえてもいないっていうこと?

「飯くらい、いいだろう」

こっちは何年も引きずったままだというのに、そんな理由で誘えるなんて、ふったほうは気が楽でいいよね。
人の気持ちにお構いなしのところは、昔と少しも変わっていない。
そういう態度が私を傷つけているなんて、きっと少しも気がついていないんだ。


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