春に想われ 秋を愛した夏
「私は、もう、……逢いたくなかった」
切り捨てるようにいった一言に、秋斗は言葉を失ったように黙り込むと瞳が切なくなる。
「わざわざ連絡も取れないようにしたのに……」
追い討ちをかけるつもりで勢いづけて言ったつもりが、秋斗の切なそうな瞳を見て尻すぼみになってしまった。
ここまで来ても、まだ未練タラタラのお人よしな自分が顔を出してしまう。
「やっぱ、嫌われてんだな……」
寂しそうに俯く顔を見て、そんなことないっ。と縋りそうに弱い自分が前に出ようとする。
同時に、そんな顔をしたいのはこっちだと怒りを覚えて叫びそうにもなった。
嫌いになるわけなんかない。
嫌いになれないから逢いたくなかったんだ。
諦められない気持ちが今も心の中に居座り続けているから、逢いたくなかったのに。
なのに、なんで。
「もう、逢わない。これで最後」
「香夏子」
「うちの会社に仕事で来ても、用事がないなら話しかけてこないで」
お願いだから、私の気持ちをかき乱さないで。
叶わない想いに縛られ続けている私は、今もあなたから離れられないのだから。
私を好きになれないのなら、もうこれ以上近づいてきて欲しくない。
怒りと悲しみが混在して、わけのわからない感情に気が狂いそうになった。