宿った命
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隣で静かに眠る彼女の寝顔を見つめる。
ふーっと息をはいて、その手をそっとのばす。
サラサラと、柔らかく綺麗な髪に触れた。
疲れたのかな?
微かに寝息をたてる紗季の顔は安らかで、
とても愛おしかった。
「紗季」
そっと呟くと、紗季の目がゆっくりと開いた。
寝ぼけたようにぼーっと俺を見上げる。
目が合うと、脱力したようにはにかむ紗季。
反則だろ。そんなの。
俺のこと、女友達みたいに思ってんのかな?
全然男としてみてないだろ・・・。
頭の中で悶々と駆け巡る気持ちを抑えて、
俺は紗季の頭に手をのせた。
ぐしゃっと撫でてやると、紗季ははっとして
起き上がった。
「やーっと起きた。全然起きないから
ずっと待ってたんですけど」
「えっ!?嘘、ごめん!!」
「別にいいよ。朝はいつも俺が遅いし」
「え?で、でも・・・」
「さ、帰ろうぜ。暗くなる前にさ」
「え?」
「なんだよ。まだ帰んないのか?」
びっくりしたような顔をして固まる紗季に、
俺はそう言った。
やっぱり誰か待ってたのかな?