宿った命



・・・・・・・・・・・・・・・・・・






隣で静かに眠る彼女の寝顔を見つめる。


ふーっと息をはいて、その手をそっとのばす。


サラサラと、柔らかく綺麗な髪に触れた。




疲れたのかな?


微かに寝息をたてる紗季の顔は安らかで、
とても愛おしかった。


「紗季」


そっと呟くと、紗季の目がゆっくりと開いた。


寝ぼけたようにぼーっと俺を見上げる。


目が合うと、脱力したようにはにかむ紗季。



反則だろ。そんなの。


俺のこと、女友達みたいに思ってんのかな?



全然男としてみてないだろ・・・。




頭の中で悶々と駆け巡る気持ちを抑えて、
俺は紗季の頭に手をのせた。



ぐしゃっと撫でてやると、紗季ははっとして
起き上がった。


「やーっと起きた。全然起きないから
 ずっと待ってたんですけど」



「えっ!?嘘、ごめん!!」



「別にいいよ。朝はいつも俺が遅いし」


「え?で、でも・・・」


「さ、帰ろうぜ。暗くなる前にさ」


「え?」


「なんだよ。まだ帰んないのか?」



びっくりしたような顔をして固まる紗季に、
俺はそう言った。


やっぱり誰か待ってたのかな?


< 61 / 63 >

この作品をシェア

pagetop