【完】『遠き都へ』
宴が、果てた。

酔い潰れた大介はすっかり横になって、高いびきを立てている。

セイラも椅子にもたれ眠ってしまい、あゆみと優姫は水場で洗い物をしたり、グラスを片付けたりしている。

理一郎は酒が残った目で、しかし頭は冴えていた。

隅の壁に体を預け、椅子にあぐらをかきながら、あゆみと優姫のいるカウンターの向こう側へと視線を投げやっていた。

「そう言えばさぁ、桜井くん」

「ん?」

「お父さんの例の件、大丈夫だったの?」

「無事に片付いたよ」

「良かったね」

「まぁもうこれで、高知に帰る頻度は確実に減るだろうなぁ」

「そうだよね…桜井くんはお父さんと仲悪かったもんね」

理一郎は卓にわずかに残された豆腐をつまみながら、チビチビ飲んでいる。

「そういや、優姫ちゃん…だっけ?」

「はい」

優姫が声を発した。

「優姫ちゃんのお父さんって、どんな人?」

「うちのパパ…ですか?」

「うん」

マンガ描くときの参考までに聞いとこうって思って──理一郎は小さな嘘をついた。

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