悪魔ニ花束ヲ
どこをどう取ればそう聞こえますか。いや、この場合はこの場所に来てしまったあたしが悪いんだ。なんて最恐のタイミングなんだろう。
それは僅か二分前の出来事。
あたしが、化学教師から預かった資材室の鍵を開けようと手にかけた時、ガタンと隣の校舎へ続く階段の方から聞こえた物音。
なんじゃい、と覗き込んだ自分の好奇心を叱咤したい。それすらも、この抗えない魔力のせいにしたい。
男女のラブシーン。というより女が押し倒しているというか、何というか。
――――「…気持ち悪い」
落ちたのはたった一言。
聞き覚えのあるその声にあたしは重大なミスをした事に気づく。覗くべきじゃなかった。平穏を愛すなら。