悪魔ニ花束ヲ

無造作に繋がれた手に視線が奪われて、目を細める。


汗ばむ、なんて言葉知らないかのような灰原の手はうっすら血管が浮いていて、スラリと長い指先が、難無くあたしの可愛いくもなんともない普通の手を包んで、美女(この場合は灰原)に手を引かれる根暗な野獣。
活字で眺めるよりも、目の当たりにしてしまう方がずっと滑稽だ。


なのに、


胸が酷くくすぐったい、なんなんだろう、と頭で考えるよりも、理解出来ない熱さがあたしを渦巻く。理解できない?いやしたくない。勘弁してください。

「花?」

立ち止まったあたしに振り返った灰原があたしを覗き込む。

僅かに濡れた髪が光を含んでキラキラしている。この位置からでも分かる長い睫毛。深い顔立ちなのに濃くない。端正なのに女性的な訳でもない。すべてが一級品の男。


ううん、そんな完璧な容姿の事じゃない。
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