悪魔ニ花束ヲ
「……金?」
案の定灰原は怪訝な顔をした。当たり前だ。
────結局あたしは心のオアシスをこの俺様に白状して、もうどうでも良いから家に帰りたいと泣きそうになった。
そして、今あたしは灰原と肩を並べて歩いている。懇願して手は離してもらった。だけどあたしの鞄は灰原が持っている。逃げないようにするための人質だ。この状況を誰かに見られたくない、絶対に。傍目から見れば天下のちぃ様に荷物持ちをさせる地味子。嗚呼、このままじゃ自我が崩壊する。
「…で?いつ着くのかな?」
灰原は不機嫌さマックス。それもその筈、小降りとはいえ雨なのに傘もささず、おまけに目的地にはいつまでたっても辿り着かない。
「確かこの辺だった筈なのです」
しかし覚えてませんがな。だってあれは日頃疲れたあたしへの優しい白昼夢。思えば店の名前だってメランコリックだし。
「それでどうやって約束とやらを果たす気だったのさ?君って馬鹿?」
現実逃避のあたしにはぐぅの根も出ませんよ。
「店の名前は」
呆れたように灰原が聞く。
「Wonder Garden…です」
あたしは瞳を伏せた。