悪魔ニ花束ヲ
灰原千景に聞こえないように、だけどわたしにははっきりと。
固まったわたしに、久城さんは苦笑して、わたしの頭を撫でた。
ガタン、と音がして振り返れば不機嫌そうな灰原が目に映る。
「久城さん、こいつをからかわないで下さい」
僅かに怒りを滲ませる灰原にわたしが動揺してしまう。
「からかう?千景にしては珍しいな。そんなに執着するのは。もしかして、君が『ハンカチの君』なのかな?」
「久城さん!」
ダンっと灰原がテーブルを叩く。ぶわり、と髪の毛が逆立つような緊張感が走った。
「あははは。そんなに威嚇しなくても大丈夫だよ。『ハンカチの君』じゃない事は分かってるし、ただ珍しい光景を見たからね?いらないお節介」
ニコニコと笑う久城さん、反対に不機嫌極まりない灰原千景。わけがわからなくて、パチリと瞬きすると久城さんが苦笑した。
「帰るよ、花」
わたしの首を猫のようにつまんで立ち上がらせる灰原。いったい何なんだ。
「花ちゃん、またおいで」
久城さんが笑顔で手を振った。