強引男子のイジワルで甘い独占欲


茶色いショートの髪。身体の線も細くてスラっとしているから、ボーイッシュな雰囲気ではあるけど、顔立ちは二重で愛らしく、女性らしさもある。
何度も睨みつけてくれたとは言え、それに加えて綺麗な人だったから、私も記憶に残っていたのかもしれない。

色んなオフィスビルばかりが並んでいるせいか、終業時間を迎えたばかりの今の時間は人通りがほとんどなく道は閑散としていた。

「そうですけど」

十中八九、用件が眞木関連だという事は分かっているだけに、何の用ですか、とは聞かずに向き合うと女性が自己紹介を始めた。

「私、SWデザイン企画の井川っていいます。隼人くんと……中学から大学まで同じでした」
「あ、そうなんですか……」

じゃあ、眞木とは友達とかそういう仲になるんだろうか。
なんだか思っていたのとは違う方向に走り出した話にただ驚いていると、井川さんが続ける。

「こちらの会社に来る度に聞く噂だと、今、隼人くんは佐野さんと付き合っていて、ふたりもそれを認めたって事になってますけど……本当なんでしょうか」

あれ、やっぱりこういう方向の話に戻るのか?と不思議に思いながら、そうだと頷くと、井川さんが面白くなさそうに顔をしかめた。

「なんで、佐野さんなんですか?」
「……さぁ。それは眞木に聞いてもらわないと私も分かりませんけど」
「どっちから告白したんですか?」
「それはプライベートな事なので答える必要もないかと。
……あの、つまり、井川さんは私と眞木が付き合ってるのが気に入らないって事でいいですか?
もっとも、気に入らないって言われたところで、私にはどうする事もできないですが」


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