強引男子のイジワルで甘い独占欲
「返してってば! それ、最後の一個だったんだからね!
激戦の中勝ち取ってきたんだから」
「パン半分くらいでうるせーな」
「人のモノ取っておいてパン半分くらいとかどの口が言ってんの?!」
私のお昼のメインはそれだけなんだから!と限界まで手を伸ばすと、それを避けるようにして器用にメロンパンを食べる眞木が「じゃあこれ食えば」と自分のお弁当を指す。
正直、一目見た時からかなり魅力的だとは思っていただけに、そう言われて思わず「えっ」と嬉しさの滲んだ声を出してしまった口を手で隠したけれど、眞木にはしっかり聞こえてしまっていたようで。
はは、と珍しく爽やかに笑う眞木に、ますますバツが悪くなって目を逸らした。
「食えば。多分、うまいし。
ちょうど半分の量だしこのパンとトレードな」
「そこまで言うならそうしてあげてもいいけど」
そんな言ってねーだろとツッコむ眞木からお弁当を受け取る。
メロンパン半分とお弁当半分じゃ量が違うし申し訳ない気もするけど、おいしそうだから遠慮なく食べさせてもらおうと箸に手を伸ばしてから……さすがに眞木の箸をそのまま使うのはマズイかと思って手を止めた。
もう食べかけのパンをそのまま食べられちゃった時点で、眞木もその辺気にしない人なんだろうなっていうのは分かったけれど、箸そのままはなんとなく食べかけのメロンパンより直接的な気がして。
大してない周りの目も一応気にした方がいいしと、休憩室に置いてある割り箸を持ってきてからいただきますと手を合わせた。