【完】こいつ、俺のだから。
「ごめん。具合悪かったから、スマホ見てなかった……」
「返事くらいしろよ。まじ焦るから……」
「?」
あたしの存在を確かめるかのように、佐野の抱きしめる腕の力は、少しずつ強くなっていく。
そのたびに、胸がドキドキとする。
「なんかあったのかと思ったじゃねぇか。心配して損した」
「……心配してくれたの?」
こう聞けば、佐野は絶対、かぶりを振ると思ったのに。
「……あぁ、心配した。めっちゃ動揺した」
なのに佐野は、抱きしめる腕をさらに強め、そんなことを言う。
ふざけるような、否定するような、そんなそぶりはまだ見せない。
「今朝、家の前で待っててもお前出てこないし、避けられてるかと思った……」