【完】こいつ、俺のだから。



「なにしてんの?」



「……前野に買うもん聞いてるんだよ」



へぇ。ほぉ……。


前野さんとラインしてるんだ。


あたしにはあんまライン送ってこないクセに。



……文化祭準備の話とか、よくしてんのかな?




「あ、電話かかってきた」



メッセージを送ると電話がかかってきたらしい、表示された画面にびっくりして、佐野はすぐに電話に出た。



「あ、前野?今電話して大丈夫なのかよ。……あー、そーなんか。
俺ら今、駅前にいるんだけど」




ふたりの会話してる。


スマホ越しに、前野さんの声が聞こえる。



……なんだ?この胸のモヤモヤ。




思い出すのは、あたしが佐野に礼を言うため電話したときの、佐野の言葉。



――『右からも左からもお前の声が聞こえるのって、すげー落ち着く』



耳もとで聞こえる声に、隣から聞こえる声に、安堵したのを覚えてる。




『だから、困ったことがあったらいつでも連絡して』



『困ってないと、ダメなのか?』




そう言ったのは、あんたなのに。


別にあたし、ダメって言ってないのに。



あんた全然、電話してこないじゃん。



なのに前野さんとは、そんな簡単に電話するんだ。


……自分から、連絡するんだ。



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