【完】こいつ、俺のだから。
「……テーブルクロス?んなもんテキトーでいいだろ。はっ、コーヒー豆?」
「…………」
あたしは自分の手を見つめた。
前野さんに連絡するからって理由で離された手。
……自由の身になったのに、なんでこんな気持ちになる?
「はぁ!?そんなに買えるかよ!
……わかったよ。学校から金が出るんだよな」
まだ話は続きそうだ。
だからあたしは、ひとりで先に歩く。
自由の身になった今、自由に自分の行きたいところに行くし。
佐野なんて、もう知らね。
そう思いながらも、数十メートル離れてからうしろを振り返ってみる。
だけど佐野はまだ電話していた。気づいてないあたしに。
ちょっとさみしい気持ちになる。
……ここって駅前だから、前に佐野と一緒に行った新しくできたドーナツ屋さんあるよね?
ドーナツ買ったら、こっち見てくれるのかな。