【完】こいつ、俺のだから。
「じゃ、あたしはお先に失礼する!」
なにも聞かずに、光はニコッと笑って手を振って帰って行く。
……あたしに気を遣ってくれたのかな。
どちらにせよ、そのことに触れてくれなくて助かった。
だって、今なにか聞かれてもなんも答えられない。
あたし自身も、自分の気持ちに追いついてないから。
……ちゃんとわかったら言うかね。
光のそういうところに、いつも救われる。
そして周りのみんなも帰って行き、教室にはあたしひとりだけとなった。
外から聞こえる声は、おそらく後夜祭準備をしてる人たちだろう。
日直が窓を閉め忘れていたのか、風が優しく吹いている。
それは、あたしの髪をサラサラとなびかせた。
そっと、自分の髪に触れる。
「髪、長いなぁ……」
ポツリとつぶやいた独り言は、教室の中で静かに溶け込んだ。
長い、長い片想いをして。
あのときとなにひとつ変わってないあたし。
でも前よりは、笑うことが増えた気がする。
楽しいって思える時間が、増えた気がするんだ。