【完】こいつ、俺のだから。
さみしいな……なんて、思っちゃいけないのに。
どうしても、佐野の手が離れてしまったことが、さみしくて仕方なかった。
そのあと、あたしはひとりテクテクと保健室まで向かっていた。
人差し指から、血がタラタラと出ている。
「痛い……」
指よりも、胸に突き刺さったようなチクチクとした痛みがあたしを襲う。
こんな感情いらない。
誰かを独占したいなんて、あたしそんな心の狭い人間だったっけ?
気づけば保健室の前に来ていて、あたしはドアをあけようと手を伸ばす。
だけど先に、保健室のドアは開いた。
中にいた人がちょうど出てこようとしていたみたいで、鉢合わせる。
「仁菜?」
胸のモヤは、晴れそうにない。
「……戸田、先輩……」
目の前の人物を、ただ見上げて驚いてることしかできなかった。