【完】こいつ、俺のだから。
「またすごいサックリと切っちゃったね」
「す、すいません……」
先輩に引きつられて、あたしはなぜか手当てしてもらうハメになってしまった。
参るな……こんなとこで2人きりになるなんて。
「ちょっと痛いけど、我慢してね」
先輩はコットンを使って、消毒液をポンポンとあたしのケガした指に押し当てる。
体育祭のときの佐野のシュパッと違って、とても優しい手当ての仕方だ。
じんわりとした痛みが指から全身に響いてくる。
佐野の急激な痛みよりも、幾分かマシだ。
だけど。
――『今ある弱音、全部吐け』
体育祭のとき、あたしの泣きたかった気持ちを見破った佐野は、2個目のお願いを使ってそう命令してきた。
ちょっとの遠慮もなしで、あたしの痛みを引き出してくれた。