【完】こいつ、俺のだから。




今思えば、あれは全部佐野の優しさだったのかもしれない。



不器用でわかりずらいけど、でもヤツはあたしのために頑張ってくれた。



何度もあたしを救ってくれた……。




バカみたいに真っ直ぐで、でもどこかさりげないその優しさに、あたしが惹かれていたのは間違いない。



好きになるのは、時間の問題だった。




「はい、終わったよ」



「あ、ありがとうございます」



先輩の声でハッとする。



ふと自分の手を見てみると、キレイにあたしの指に絆創膏を巻きつけてあった。




「…………」



「…………」



しばしの無言が続く。



……ど、どうすれば……。





「あの」


「なぁ」




お互い顔をあげたと同時に、声がかぶった。



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