【完】こいつ、俺のだから。
あたしは急いで棚から腹痛の薬を取り出した。
そしてコップに水をくんで、先輩のもとまで向かう。
「先輩どうぞ。飲んでください」
「ありがとう」
あたしから薬と水を受け取った先輩は、それをすぐには飲まずじっと見つめた。
「……? どうしたんですか?」
「……いや」
少しさみしげに笑った先輩は、次の瞬間、それをゴクッと飲み込む。
そしてまた、悲しげに口角をあげた。どこか、自嘲気味に。
「こうやって、仁菜が俺のために一生懸命になってくれてるとこ見ると、昔思い出すなって思って……」
「…………」
ドキッとした。
瞬間、走馬灯のように駆け巡る記憶は、片想いしてた先輩を必死に追いかけていたときのあたし。
単純でバカなあたしは、ただ全力に先輩のために頑張ってた。