【完】こいつ、俺のだから。
「ごめんね、仁菜」
「え……?」
突然謝られてびっくりする。
「たくさん傷つけて、ごめん」
……先輩?
「仁菜と別れてからずっと後悔してた。
あのときもっと、俺は頑張れたんじゃないかって」
コップを近くのテーブルに置いた先輩は、そっとあたしの手を握った。
昔と変わらず、優しく優しく包み込むように。
「今更遅いかもしれないけど、本当のこと言わせて。
俺、仁菜のことを裏切ったワケじゃないよ」
「……」
何を言ってるの……?
嘘だ。先輩はあたしを裏切ったじゃない。
夏休みに入る前、あたし見たよ。裏切られた光景を。
そして夏休みが終わってすぐ、〝あのとき〟のことを問い詰めたのに、あなたはあたしにこう言った。
『もういいや。そういのめんどいし、別れよ』
冷めた目で、あたしのことを捨てたじゃない。