【完】こいつ、俺のだから。




「ごめんね、仁菜」



「え……?」



突然謝られてびっくりする。




「たくさん傷つけて、ごめん」



……先輩?



「仁菜と別れてからずっと後悔してた。
あのときもっと、俺は頑張れたんじゃないかって」



コップを近くのテーブルに置いた先輩は、そっとあたしの手を握った。



昔と変わらず、優しく優しく包み込むように。




「今更遅いかもしれないけど、本当のこと言わせて。
俺、仁菜のことを裏切ったワケじゃないよ」



「……」




何を言ってるの……?



嘘だ。先輩はあたしを裏切ったじゃない。



夏休みに入る前、あたし見たよ。裏切られた光景を。


そして夏休みが終わってすぐ、〝あのとき〟のことを問い詰めたのに、あなたはあたしにこう言った。



『もういいや。そういのめんどいし、別れよ』



冷めた目で、あたしのことを捨てたじゃない。



< 315 / 418 >

この作品をシェア

pagetop