【完】こいつ、俺のだから。
「知ってるわそんくらい!」
「なら聞かないでよ父さん……」
今僕は、波平父さんに叱られたカツヲ君気分だ。
「カツヲだけに、〝喝(かつ)を〟いれられたってね」
「あーあ……髪キレイだったのに。切るまでしなくてよかったに」
「無視かよ」
あたしはズキズキと痛む頭を押さえながら光を見つめた。
いや、ここまでギャグをスルーされると胸の方が痛いはずだけど、あたしのハートはそこまで野暮じゃない。
こんなんでヘコたれてたまるもんか。
だってもう、過去の自分は捨てたんだ。
「これがあたしの覚悟だよ」
「え?」
短くなった自分の髪に、そっと触れてみる。
「……あたしにはもう、なんにも残ってない。
新しい自分で、片想いから始めるの」
「……仁菜……」
先輩にも光にも褒められた長い髪を捨てて、新しい自分で、この気持ちと向き合いたい。
〝佐野が好き〟って、この気持ちと。